失業したときにもらえる基本手当は、受給できる期間に決まりがあります。

実際の社会保険労務士試験では事例問題が出題されて、自分は理解できたと思っていたのに正答することができませんでした。

でも基本をおさえれば大丈夫です。

令和5年度社会保険労務士試験の選択式試験問題を解きながら、受給期間の原則と特例をさらっと確認しちゃいましょう。


〔問〕60歳の定年に達した受給資格者であり、かつ、基準日において雇用保険法第22条第2項に規定する就職が困難なものに該当しない者が、定年に達したことを機に令和4年3月31日に離職し、同年5月30日に6か月間求職の申込みをしないことを希望する旨を管轄公共職業安定所長に申し出て受給期間の延長が認められた後、同年8月1日から同年10月31日まで疾病により引き続き職業に就くことができなかった場合、管轄公共職業安定所長にその旨を申し出ることにより受給期間の延長は令和5年【    】まで認められる。

【    】に入る最も適切な語句は、以下の①~④のうちどれでしょうか?
①7月31日
②9月30日
③10月31日
④12月31日

〔考え方〕

定年退職した後すぐに求職活動をしないで、少しの間は休みたいとう方のために、基本手当の受給期間を延長することができます。

この延長期間に関する問題。
基本がわかっていれば難なく解ける問題ですが、私は✖でした。
どう考えれば良いのでしょうか。

原則の受給期間

そもそもの基本手当の受給期間の原則をおさえましょう。
こちらです! ↓

①下記以外の受給資格者  → 1年
②所定給付日数が360日の受給資格者  → 1年+60日
③所定給付日数が330日の受給資格者  → 1年+30日
※受給期間は、離職日の翌日から起算します。

②の「所定給付日数が360日の受給資格者」とは、就職困難者(心身に障害があったり保護観察に付されたり等の事情で就職が阻害される者)で、算定基礎期間(原則として同じ会社に被保険者として雇用された期間)が1年以上ある45歳以上65歳未満の者が該当します。

③の「所定給付日数が330日の受給資格者」とは、特定受給資格者(倒産や解雇などで離職を余儀なくされた者) で、算定基礎期間が20年以上ある45歳以上60歳未満の者が該当します。

受給期間の延長

この受給期間を延長できるのは、次の2つの場合です。

①妊娠・出産、育児、疾病や負傷、介護や看護、海外勤務する配偶者に同行する場合
→ これらの理由でひき続き30日以上仕事に就けない期間がある場合、本人の申し出によりその期間の日数分、受給期間が延長されます。ただし延長後の受給期間の上限は4年です。

例えば原則の受給期間が1年である受給資格者が、①の理由で仕事に就けないことを申し出た場合、仕事に就けない期間が3年以内であれば、受給期間は原則と同じ1年が確保されるというわけですね。

②60歳以上の定年で離職した場合
→ 本人の申し出により「求職の申込みをしないこと」を希望する期間が、原則の受給期間に加算されます。
ただし求職の申込みをしない期間の上限は1年です。

そして②の場合、上記①の場合とあわせて受給期間の上限は4年です。
①と②の期間が重複する場合は、さらなる延長はされません。

以上をおさえて、改めて問題を見てみましょう。

求職の申込みをしない期間中に病気になったら?

今回の問題では、②の「60歳以上の定年で離職した場合」の延長期間が問われています。

受給資格者は、令和4年3月31日に定年退職した後、同年4月1日から6か月間(つまり同年9月30日まで)求職の申込みをしないことを希望する旨を、同年5月30日に届け出ました。

これにより受給期間は、原則の1年に6か月を加算した1年6か月(令和5年9月30日まで)となりました。

ところが求職の申込みをしない期間内である令和4年8月1日から病気療養に入り、求職の申込みをしない期間が過ぎても病気が治らず、結局同年10月31日まで療養が続き、この間仕事に就けませんでした。

療養期間のため仕事に就けなかった期間は、令和4年8月1日〜同年10月31日の3か月です。

よって受給期間は、原則の1年に令和4年4月1日〜同年10月31日の7か月間を加算した1年7か月(令和5年10月31日まで)となります。

療養期間3か月のうち、求職の申込みをしない期間と重複している期間は、さらなる延長はされないことに注意しましょう。


〔答〕 ③10月31日


また求職の申込みをしないことの申し出は、離職の日の翌日から起算して2か月以内に行わなければなりません。
この問題では、受給資格者は令和4年3月31日に定年退職した後、同年5月30日に申し出をしているので問題ありませんね。

受給期間内に就職して再離職したとき(復活受給)

受給資格者が受給期間内に就職して、その受給期間内に再離職した場合、再離職に際して新たな受給資格、高年齢受給資格、特例受給資格を取得したときは、受給期間内であっても従前の基本手当は支給されません。

再離職に際して新たな受給資格を取得していなければ、受給期間内に従前の基本手当の支給を受けることができます。

受給期間内に起業したときの特例

受給資格者が、離職日の後に起業した場合、申し出により事業の実施期間は受給期間から除かれます。
受給期間から除かれる期間は最大で3年です。

つまり離職日後に起業して3年以内に廃業した場合、廃業後に原則の受給期間は基本手当の支給を受けることができるというわけです。
これは企業へのチャレンジを応援する制度なんですね。

ただし起業した日の翌日から起算して2か月以内に申し出なければ、この特例は受けられないことに注意しましょう。

もしもこの受給資格者が、妊娠・出産、疾病・負傷等で受給期間が延長された場合は、延長日数と合わせても3年が限度です。

今日もおつかれさまでした( ^^) _旦~~

最後までお読みいただき、ありがとうございました。