会社員が副業する場合、各保険制度への加入はどうなるのでしょうか。
例えば・・・
「2つの会社で働く場合、保険証(※)は2枚になるの?」
(※令和6年12月2日以降は、健康保険証の発行は終了してマイナ保険証に移行します!)
「副業先を退職した場合も失業給付は受けられるの?」
など、色々な疑問がうまれます((+_+))
前回は、副業の場合の労働時間の通算について書きましたが、今回は社会保険等への加入について確認します。
※副業の場合の労働時間の通算については、こちらの記事をご覧ください。
↓
副業する(させる)ときのポイント②労働時間は通算されるか
社労士試験対策用の基本テキストでは副業労働者について、「2以上の事業所に使用されるもの」(健康保険)、「複数事業労働者」(労災保険)、「2以上の事業主の適用事業に雇用される者」(雇用保険)など、法によって呼び方は統一されていないものの、それぞれ副業労働者についてのルールが明記されています。
社会保険労務士試験対策として、各法の横断的な学習ができることも意識してまとめました。
社労士受験生の皆さんも、ぜひ参考にしてください。
各保険制度への加入は副業での「働き方」による
会社員が副業するといっても、副業での働き方は様々。
退社後や休日に副業としてアルバイトするケースもあれば、フリーランスとしてブログやアフィリエイトの広告収入で稼ぐ、友人と起業するなんていうケースもあるでしょう。
各保険制度への加入は、この副業での働き方の形態によって大きく変わってくるのです。
ここでは、副業での働き方として
(1)アルバイト
(2)会社役員
(3)個人事業主
の3つの形態に分けてみていきましょう。
(1)アルバイトとして働く場合
副業でアルバイトとして雇われて働く場合は、労働基準法が適用される労働者として、労働時間が通算されます。(※)
(※ただし農業・水産業、管理監督者などは、労働時間規制が適用されないため労働時間は通算されません。)
では各保険制度への加入はどうなるかといいますと・・・
①健康保険・厚生年金保険
健康保険・厚生年金保険は、本業、副業それぞれの会社において「被保険者としての要件」を満たせば、それぞれの会社で加入することになります。
「被保険者としての要件」
被保険者としての要件は、次の㋐、㋑のとおりです。
㋐1週間の所定労時間と1か月の所定労働日数が、その会社の正社員と比べて4分の3以上(いわゆる「4分の3基準」です)であること。
㋑4分の3基準を満たさない場合でも、以下の4つの要件が全て当てはまれば被保険者となります。
・1週間の所定労働時間が20時間以上
・報酬が月額88,000円以上
・学生でない
・特定適用事業所(厚生年金被保険者が常時51人以上)か、労使合意に基づき保険者に申し出た事業所に使用されている
ただし上記に該当する場合でも、適用除外者(船員保険の被保険者や、日雇い労働者、雇用期間が2か月以内の短期アルバイト、雇用期間が4か月以内の季節労働者、雇用期間6か月以内の臨時的事業(万博など))の場合は被保険者とはなりませんので、ご注意ください。
保険者を決める
被保険者としての要件に該当し、副業先でも社会保険に加入することになったときは、副業労働者は10日以内に本業と副業のどちらの保険に加入するかを決めて、協会けんぽに加入するときは日本年金機構に、健保組合加入するときは健保組合に届書を提出します。
保険者が本業と同じ場合は、「年金事務所の選択の届出」または「2以上の事業所勤務の届出」が必要です。
標準報酬月額の算定方法
副業労働者の標準報酬月額(社会保険料算定の基礎なる給与の月額)・賞与額は、本業、副業それぞれの会社での給与を合算した額をもとに決定されます。
そしてこの合算額に対する本業、副業それぞれの会社が支払った給与の割合に応じて、それぞれの会社が納付すべき保険料が決まります。
保険者は、副業する本人が選んだほうになりますが、保険料の負担は本業、副業双方の会社が負担するというわけですね。
②労災保険
労災保険は、本業、副業いずれの会社でも強制加入となります。
そして例えば副業先で労働災害に遭ってしまい、どちらの会社にも出勤できなくなってしまった場合の休業補償給付基礎日額は、本業、副業それぞれの会社での賃金額を合算した額をもとに決定されます。
また脳・心臓疾患、精神障害などは、本業と副業のどちらか一方の会社の業務だけでは労災認定が難しいケースでも、双方の会社での業務を総合的に判断して労災と認められる場合があります。
副業労働者を雇用する会社側も、自社での業務量だけを管理していれば良いわけではなく、他社での業務による労働者への負担も把握しておかなければならないということですね。
③雇用保険
副業労働者の雇用保険は、社会保険と異なり、「その者の生計を維持するのに必要な主たる賃金を受ける会社でのみ加入する」ということになっています。
この例外が、「特例高年齢被保険者」です。
これは、次の㋐~㋒の3つ全ての要件に該当する副業労働者が、厚生労働大臣(実際は住所を管轄するハローワーク)に申し出ることで特例高年齢被保険者となることができるというものです。
㋐2以上の事業主に雇用される65歳以上の者
㋑1つの事業主での1週間の所定労働時間が20時間未満
㋒2つの事業主での1週間の所定労働時間の合計が20時間以上(※)
(※ただし1つの事業主での1週間の所定労働時間が5時間以上であることが必要)
短時間のアルバイトを掛け持ちしている高年齢者が対象となります。
次回は、アルバイト以外の副業をする場合の社会保険について確認します!
今日もおつかれさまでした( ^^) _旦~~
最後までお読みいただき、ありがとうございました。