終活について「遺言書を書いておけば大丈夫」と思っている方も少なくないようです。

でも遺言書は、あくまでも自分の亡き後の遺産分配を指定するもの。
自分の老後対策にはならないのです。
自分の老後、体力や認知機能が衰えたときに、生活面でのサポートや財産の管理を誰にしてもらうかは、別途対策が必要なんです。

しかも日本は長寿化によって、不健康寿命も延びると言われています・・・
Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン
自分の老後について考え、対策しておくことは、これらかの時代ますます重要になってくるはず。

前回の記事では、自分が老いたときに考えられるリスクと、備えについてまとめました。

 ※前回の記事はこちら。
  ↓
 終活してます

①体力、判断力が低下するリスク → 「見守り契約」で備える
②入院するリスク → 「身元保証契約」「財産管理委任契約」で備える
③認知症になるリスク → 「任意後見契約」で備える
④亡くなったとき → 「遺言」「遺言執行者の選任」と「死後事務委任契約」で備える

実際には、備えておかなくても家族や親族が、これらの問題を引き受けてくれているケースが大半かと思われますが、引き受けた側に金銭面や生活面で相当な負担がかかってしまいます。

一方でこれらのことを家族や親族に頼らず、全て第三者との契約で行うのであれば、専門の士業の方を探して相談するなど早めに動く必要がありますし、報酬として相当の金額を準備しておかなければなりません。

家族信託というしくみ

ところで、「財産管理委任契約」「任意後見契約」「遺言」の3つの機能を、信託契約という一つの契約で実現できる「家族信託」というしくみがありますね。

家族信託は、自分が元気なうちに財産管理を信頼できる相手(家族など)に託しておく制度。
親が子に託すケースが一般的のようです。

財産を託す人(通常は親)を委託者、託される人(通常は子)を受託者といい、財産の名義は受託者にうつりますが、受託者は信託契約の内容どおり財産の管理・処分を担うだけ。
財産の持ち主は親のままなので、贈与税はかかりません。

親が元気なうちから自分の財産の管理を子に任せ、親が認知症などで意思・判断能力が不十分になっても、子がそのまま財産の管理を継続できるので、財産凍結の不安がありません。
認知症対策としては、とても有効な制度です。

さらに家族信託では、委託者である親が亡くなった後の、次の財産の持ち主を、信託契約によって予め決めておくことができるのです!

例えば、委託者である親が亡くなったら、今度はその配偶者(もう一方の親)を財産の持ち主として、財産管理はこれまでどおり、受託者である子が引き続き行うことができます。
さらにもう一方の親の亡き後は、財産を管理していた子が財産を受け継ぐ、というように。

遺言と同様に、財産を自分の遺したい相手に遺すことができるわけですね。

このように家族信託は、自分が元気うちは「財産管理委任契約」としての機能、自分が認知症などになったら「任意後見契約」としての機能、自分の亡き後は「遺言」としての機能を実現できる、画期的なしくみなんです。

ただしこの家族信託は、信託契約という法律行為を必要とするため、認知症など意思・判断能力が不十分になってからでは利用不可。
意思・判断能力が十分なうちに、契約をしておく必要があります。

家族信託のデメリット

家族信託には、以下のようなデメリットや注意点も。

①歴史が浅いため、金融機関の対応にばらつきがある。
ゆうちょ銀行窓口で聞いてみたところ「対応していません」と言われました。

②家族信託で扱える財産は、不動産、現金、未上場株式などに限られる。
・委託者本人名義の預貯金はそのままでは扱えず、受託者が管理する信託口口座に移動させる必要があります。
・年金受給権は取り扱えません。
・不動産のうち、農地や借地権は別途手続きが必要。
・上場株式や投資信託などは、対応してくれる金融機関がごく一部に限られるそう。
ネット情報によれば、信託口口座を開設できる大手証券会社は、野村證券、大和証券、楽天証券。

③家族信託は「財産管理」を託すものなので、介護など「身上監護」は対象外。
介護や見守りだけでなく、死後の事務についても誰に頼むか、どのようにしてもらいたいのかなど、別途考えておく必要があります。

それから私個人が、この制度で最も大切だなと感じるのが、誰に財産管理を託すのかという点。
受託者と委託者の間はもちろんですが、受託者と他の家族との間に信頼関係があってこその「家族信託」だと思います。

受託者が財産を私的に使ってしまっているのでは、という疑念を持ったり持たれたりしては、どちらにとっても不幸です。
せっかく制度を利用して財産を守ったとしても、家族関係が悪くなってしまったら、何のための対策だったのかわからなくなってしまいますからね。

この制度を利用する場合には、家族全員でよく話し合い、全員が納得できる形で契約できるという前提条件をクリアできることが必須です。

成年後見制度とは

意思・判断能力が喪失した場合の支援として、「成年後見制度」がありますね。
この制度は本人に代わって成年後見人が、本人のために「法律行為」「財産管理」「身上監護」を行うというもの。

家庭裁判所の監督のもとに行われ、本人の利益のために支援を行う制度なので、公正で安心できる反面、制度利用には家庭裁判所への申立てが必要など、手続きが煩雑なのが難点。

成年後見人が家族や親族以外の第三者の場合は、被後見人の財産管理や介護などについて、家族に決定権がなくなり、

また、大きなデメリットの一つが、家族や相続人の利益になるような相続対策などが、一切できなくなってしまうこと。
このほか被後見人の財産管理や介護などについて、家族以外の第三者が介入し続ける可能性があることも。

※任意後見制度は、後見人になってもらう相手を予め自分で決めておき、その相手と契約しておくことができます。
ただし認知症などで意思・判断能力が不十分になってからでは手遅れ。この任意後見契約は利用できません。

そしてこの制度を一旦利用すれば、被後見人が亡くなるまで制度利用を止めらず、成年後見人(または後見監督人)への報酬も払い続けなくてはなりません。
報酬額は被後見人の財産額によって決められるそうですが、何年払い続けるのか分からないという不安は残りますよね。

相続がおきたとき、家族など相続人に認知症の方がいて遺産分割協議ができない、認知症の親の介護費用捻出のため、親の不動産を売却する必要があるなど、やむを得ない場合に利用されるケースが多いようです。

なお、意思・判断能力が喪失した場合の支援を行うための制度なので、意思・判断能力があるうちの見守りや介護、死後の事務については一切利用できません。

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どんな制度も一長一短あり、これさえすれば万事OK!というわけにはいかないものですね。
家族信託や成年後見制度、それぞれに特化した本などを読んでも、その制度のことはよくわかるのですが、自分にとってどの制度利用がベストなのか、という答えを出すのは難しいです。

私が「これはいいかも」と思ったのは、財産管理については家族信託を利用する、介護など身上監護が必要になったときは成年後見制度を利用する、という2つの制度の組み合わせ。
こんな制度利用に対応してくれる専門家の方がいたら、ぜひ相談してみたいのですが。

終活って思ったより奥が深く、知っておくべきことも膨大。
でも、もしものときに「この制度を知っていれば・・・」という後悔だけは避けたいし、家族になるべく負担をかけたくありません。

これからも勉強を続け、有益な情報を記事にまとめていきたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。