相続税対策として、配偶者や子、孫に贈与する方法がよく知られていますね。

前回の記事では、年110万円までの暦年贈与や、相続時精算課税制度(生前贈与した額のうち2,500万円までは贈与税がかからず、相続時に相続財産に加算される制度)などについて書きました。

※前回の記事はこちら。
 ↓
相続税対策あれこれ①生命保険・暦年贈与・相続時精算課税

今回は、子や孫の住宅資金を援助するときの贈与税が非課税になる「住宅取得等資金の贈与」について書きます。

住宅取得等資金の贈与で贈与税が非課税に

家は人生で最も高い買い物のひとつ。
親の資金に余裕があれば、子の住宅購入資金を援助してあげたいと思うでしょうし、子は喜び、感謝してくれるでしょう。

この住宅取得等資金の贈与は、「住宅取得等資金の贈与」の特例を利用することで、最大で1,000万円まで非課税で贈与を受けることができる、というものなんです。

〇主な要件

父母や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与であること、住宅の購入やリフォームのための資金に充てること。

また対象となる住宅にも一定の要件があります。

例えば、国内の物件であること、広すぎても狭すぎてもだめ(床面積が40㎡~240㎡であること)、購入の場合は昭和57年1月1日以降に建てられたこと、など。

要件については、国税庁ホームページでしっかりチェックしておいたほうがいいです。

〇非課税限度額

非課税限度額は、省エネ等住宅で1,000万円、それ以外の一般住宅で500万円。

これは暦年贈与(非課税限度額 年110万円)、または相続時精算課税制度(非課税限度額2,500万円)との併用もできます。
ただ暦年贈与と相続時精算課税制度は併用できないので、併用する場合にはどちらかを選択することになります。

ところで!
住宅の購入に「相続時精算課税制度」を利用するのは得策でないようなのです。

住宅購入に相続時精算課税制度は不向き?

住宅等取得資金の贈与と相続時精算課税制度は併用できますが、住宅購入資金に相続時精算課税制度を利用するのは、どうも得策でないようです。

なぜなら、相続時精算課税制度では、贈与額から基礎控除の110万円を除いた額がそのまま相続財産に加算されてしまうため、そもそも節税効果として今ひとつ。
そのうえ、この制度を住宅購入で利用した場合、購入した住宅の価値が将来(相続のとき)値下がりしている可能性が高いため、税金面では得にならないかもしれないのです。

例えば、相続時精算課税制度を選択して、子が親から住宅購入資金2,500万円の贈与を受けたとします。
この住宅の価値が、将来(相続のとき)2,500万円から1,500万円に下がっていても、相続財産は1,500万円とはならず、2,500万円から基礎控除の110万円を除いた額が相続財産として加算され、相続税が計算されてしまうのです。

こう考えると、相続時精算課税制度は住宅など値下がりする財産には不向き、ということになりますね。
収益物件の贈与にこそ、この制度利用を考えるべきでしょう。

では、どうすればいいのでしょうか?

受託資金を贈与するより、家を買って子に住んでもらう

私のおすすめ本「損しない!まるわかり相続大全」(著者:秋山 清成さん)では、次のような方法が紹介されていました。


親が子に住宅資金を贈与したり、家を買ってあげた場合は、住宅取得等資金贈与の利用しても、非課税限度額(1,000万円または500万円まで)を超えた部分には贈与税がかかってしまいます。

そこで資金に余裕のある親は、「親の名義で住宅を購入し、子に住んでもらう」のが、節税対策としては有効なんだとか。

こうすれば住宅は親のものなので、贈与にあたらないので贈与税はかからない、住宅取得等資金贈与の手続きや贈与税の申告をする必要がない、親は将来の相続財産を減らせる、などのメリットがあるんだそう。

でも?
親の家であれば相続財産として課税されてしまうから、結局は同じことでは?と思うのですが。

いいえ、そこが「お金」と「住宅」のちがうところ。
住宅は、購入した時から年数は経つごとに価値が下がるものなので、相続のときに財産の価値が下がっていれば相続税が減ることになる、というわけです。

これは住宅に限らず、車なども買うときにも使えますね。

この方法、ほかの税理士さんのブログでもおすすめの方法として紹介されていました。

資金に余裕がある方にとっては、そのほかの制度を利用するよりも税制面ではおトクなのかもしれません。

しかし、そんなに余裕があるなんて、なんともうらやましい限りです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。