働くことの意味や仕事への向き合い方を、哲学という視点から考えると面白いです。
仕事や組織を「しんどい」と思ったとき、哲学の力を借りて見方を変えると不思議と気持ちが楽になるんですね。
私の人生に無縁だった「哲学」という学問を身近に感じさせてくれた本と、その本から学んだ「仕事を続けるために大切なこと」について書きます。

働くシニアにおすすめの哲学の本

体力も気力も若い頃より衰えた私たちシニアが、それでも楽しく働き続けるにはどうしたらいいのか。

そのヒントをくれる本が
「60歳からの哲学」(著者:小川仁志さん)です。

著者で哲学者の小川仁志さんは、読売新聞の「人生案内」で悩み相談の回答者をされています。
小川さんの回答には必ず偉大な哲学者たちの言葉が引用されていて、それがとても心に響くので、私はもっと哲学について学びたいと思っていました。

ちょうどそんなときにこの本に出会い、期待どおりの面白さだったので、特に働くシニアの皆さんにおすすめしたいと思いました。
哲学というと私のような凡人には難しすぎて理解できないと思っていましたが、この本はそんなことは全くなくて、とってもわかりやすいです。

シニアが仕事を続けるために大切なこと

シニアが仕事を楽しく続けるためには何が大切か、この本でわかったことと、この本からヒントをもらって自分なりに考えたことをまとめました。

①人は自尊心のために働く

港湾労働者でもあった哲学者、エリック・ホッファーは、「自尊心」だけが自分を救ってくれるといったそうです。
そして人は、その自尊心のために働くとも。

たしかに働く目的が「成果」や「評価」、「昇進」のためだとすると、年齢を重ねるほど体力も気力も若い方には敵わなくなるので、自分が苦しくなってしまう。
認められたいとあがき、どんどん働くことが苦痛に思えてしまうかも。

でも自尊心のために働くことは、いくつになってもできます。

働くことで自分は経済的に自立している、社会の役に立っていると思えること。
そんなふうに自分を尊い、誇らしいと感じられれば、周りの評価を気にせず純粋に仕事を楽しめるような気がします。

②嫉妬、完璧主義、後悔を捨てる

人は万能ではないので、完全に満ち足りることはそもそも不可能です。
それなのに満ち足りようとするから、自分の心を苦しめ病んでしまう。

著者は特に、自分の心を苦しめるものとして「嫉妬」「完璧主義」「後悔」をあげています。

例えば自分より優れている人をねたむ「嫉妬」。
誰もが嫉妬に苦しんだ経験があるのではないでしょうか。
実は私もたくさんあります。
でも自分よりも優れている人はいくらでもいるので、誰かに嫉妬していたらきりがありませんね。

自分より優れている人が目の前にいても、ただ真面目だけがとりえの自分を愛おしく思えたら最高ですね。
うん。そう思えるよう努力してみよう。

「完璧主義」も私たちを苦しめます。
人間という不完全な存在が、完璧になれるわけがない。
それなのに常に100点満点を目指すことで、自分を苦しめてしまうのですね。

仕事でのミスが多い私ですが「自分はミスしてあたり前だ。人間なんだから」くらいに開き直って、自分を甘やかしてあげるくらいでいいのかもしれません。

そして「後悔」。
もう済んでしまったことはどうにもならないし、長く生きれば後悔することも増えていきます。
それをいちいち思い出して悔やむのは、自分の心を痛めつけているのと同じこと。

昨日のことより、生きている「今日」のことだけ考える。
つい過去のことをくよくよ考えてしまう私には難しいですが、意識だけでもしたいです。

老子は「満ち足りようとしてはいけない。それは不可能だから」といったそうです。
ここにあげた「嫉妬」も「完璧」を求めることも「後悔」も、人間だからこそしてしまうのでしょう。
そんなときでも、不完全な自分を受け入れられさえすれば、またもう少し踏んばれるということですね。

③趣味をもつ

仕事が趣味という方もいますが、この本では仕事と関係のない趣味をもつことをすすめています。
仕事と関係のない趣味のほうが、私心なく純粋に楽しめるからです。
これをやっておけば仕事に役立つというような下心があると、純粋に楽しむことができません。

哲学者バートランド・ラッセルは、仕事と関係のない趣味を持つことで初めて、様々な効用が生まれるといっています。
その効用とは、
「仕事の気晴らしになる」「仕事と私生活のバランスがとれる」「悲しみを紛らわせることができる」

趣味を難しく考えることはないですが、自分の中に仕事以外で夢中になれる世界を持つことができれば、毎日が楽しくなりますね。
それに仕事と関係のない趣味だったら、退職後もずっと楽しむことができます。

私も趣味はありますが、定年後もで夢中になれそうなこと・・・
せっかくだから何か新しい趣味を探そう!と思ったら、この本には
「趣味は探すものではなく、好きなことが高じて、結果として趣味になる」
とありました。

自分が好きでたまらないもの。
まずはこれを見つけることが先だなぁ。さて・・・?

まとめ

今回は仕事を楽しく続けるためのヒントとしてこの本をご紹介しました。
この本にはほかにも私たちシニアが老いや病、人間関係、そして死についてポジティブに考えるためのヒントがたくさんちりばめられています。
人生の見方が変わるきっかけにもなると思いますので、ぜひ読んでみてください!

私もこれを機会に、もう少し哲学を学んでみようかという気持ちになりました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。