社労士試験に合格したら、資格を活かして副業したと考えている方も多いのではないでしょうか。
私もその一人です、が・・・
わが社では副業が厳しく制限されていて、副業している人はほぼいないと思われます。
(ただし投資も副業の1つと考えれば、結構いるかもしれません。)

でも収入を増やすために、休日にアルバイトをしたいと思うことはありませんか?

そこで今回は、副業したい私が副業について調べたことを書きます。

正社員の副業は認められる?

結論から言えば副業を規制する法律はなく、むしろ国は副業を積極的に推進しているんです。

具体的には・・・

岸田政権のときに決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」(令和4年6月7日)には、多様な働き方を促進するために副業・兼業を推進する、という内容が盛り込まれているのです。

ところで、「新しい資本主義」って何でしょうか?

これは岸田政権の経済政策のひとつ。

日本経済は今、色々な問題を抱えていて
例えばこれまでのように市場や競争重視では、貧富の格差がますますひろがってしまう。
また、このまま少子高齢化が進めば働き盛り世代の人口が激減して、経済の成長が鈍化してしまう、などなど。

これでは、働く私たちも明日への希望が見えませんよね。

そこでこれらの問題を解決しましょうというのが「新しい資本主義」の目的なのです。

カギとなるのはデジタル化の促進と働く人たちのキャリア機会の強化。

官民が連携してデジタル分野に投資などを行う「成長戦略」と、成長によって原資を稼ぎ出すことで賃上げなどを目指す「分配戦略」の両面から、経済の好循環を生み出すことをめざすほか、「人への投資」によって、リスキリングによる能力向上も支援するというもの。

特定一般教育訓練給付金や専門実践教育訓練給付金の拡充は、その具体策の一つなんですね。

そして副業も、スキルアップによるキャリア形成や所得増加につながることが期待されるために、国が推進しているというわけなんです。

だいぶ話がそれましたが、国が副業を推進していることは、以上のように明らかです。

副業・兼業に関する裁判でも
「労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であり、各企業でそれを制限することが許されるのは、例えば
①労務提供上の(つまり本業への)支障がある場合
②業務上の秘密が漏洩する場合
③競業により自社の利益が害される場合
④自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
に該当するケース」とされているのです。

つまり、副業は原則自由。でも各企業が一定の制限を設けることは許される、ということになります。

厚生労働省が作成したモデル就業規則でも「労働者は勤務時間外において、他の会社等に従事することができる」としています。
(モデル就業規則はあくまでも規定の一例なので、各企業がこれと同じ規定にしなけれならないというわけではありません。)

まずは会社の就業規則を確認

いくら国が副業を推進しているといっても、労働者が副業したいと思ったら、まずは自社の就業規則や労働契約で、副業に関するルールがどうなっているかを確認する必要があります。

もしも会社の就業規則が「副業は全面禁止」だったら?

さきほども書きましたが、副業・兼業に関する裁判例でも
「労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由である」とされています。

にもかかわらず就業規則で副業を全面的に禁止している場合、その規定は公序良俗違反(民法第90条)によって無効となる可能性があるのです。

そうは言っても、労働者側から「会社が副業を認めないのは問題ですよ」とは、なかなか言えませんよね。
そんなときは会社側との話し合いで、副業を行うことを認めてもらいましょう。

副業をしたい理由として「能力を高めたいから」あるいは「スキルアップを図りたいから」ということをアピールすると良いかもしれません。

厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」によれば、従業員が副業することで企業にとっても次のようなメリットがあるとしています。

①労働者が社内では得られない知識・スキルを獲得することができる。
②労働者の自立性・自主性を促すことができる。
③優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上する。
④労働者が社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで・事業機会の拡大につながる。

副業・兼業に関する裁判

厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」に記載されている裁判例を紹介します。

マンナ運輸事件(京都地判平成24年7月13日)

【概要】

運送会社が、準社員からのアルバイト許可申請を4度にわたって不許可にしたことについて、後2回については不許可の理由はなく、不法行為に基づく損害賠償請求が一部認容(慰謝料のみ)された事案。

【判決抜粋】

労働者は、勤務時間以外の時間については、事業場の外で自由に利用することができるのであり、使用者は、労働者が他の会社で就労(兼業)するために当該時間を利用することを、原則として許され(ママ)なければならない。
もっとも、労働者が兼業することによって、労働者の使用者に対する労務の提供が不能又は不完全になるような事態が生じたり、使用者の企業秘密が漏洩するなど経営秩序を乱す事態が生じることもあり得るから、このような場合においてのみ、例外的に就業規則をもって兼業を禁止することが許されるものと解するのが相当である。

東京都私立大学教授事件(東京地版平成20年12月5日)

【概要】

教授が無許可で語学学校講師等の業務に従事し、講義を休講したことを理由として行われた懲戒解雇について、副業は夜間や休日に行われており、本業への支障は認められず、解雇無効とした事案。

【判決抜粋】

兼職(二重就職)は、本来は使用者の労働契約上の権限の及び得ない労働者の私生活における行為であるから、兼職(二重就職)許可制に形式的には違反する場合であっても、職場秩序に影響せず、かつ、使用者に対する労務提供に格別の支障を生ぜしめない程度・態様の二重就職については、兼職(二重就職)を禁止した就業規則の条項には実質的には違反しないものと解するのが相当である。

十和田運輸事件(東京地判平成13年6月5日)

【概要】

運送会社の運転手が年に1,2回の貨物運送のアルバイトをしたことを理由とする解雇に関して、職務専念義務の違反や信頼関係を破壊したとまでいうことはできないため、解雇無効とした事案。

【判決抜粋】

原告らが行った本件アルバイト行為の回数が年に1,2回の程度の限りで認められるにすぎないことに、証拠及び弁論の全趣旨を併せ考えれば、原告らのこのような行為によって被告の業務に具体的に支障を来したことはなかったこと、原告らは自らのこのような行為について会社が許可、あるいは少なくとも黙認しているとの認識を有していたことが認められるから、原告らが職務専念義務に違反し、あるいは、被告との間の信頼関係を破壊したとまでいうことはできない。