合意分割と３号分割の違いは？
離婚時の年金分割は両者を混同してしまいがち。
私も独学で社労士試験の勉強をしているときは、理解するのに苦労しました。
でも基本をおさえればもう迷いません！
それぞれの要点をさらっと確認しちゃいましょう。
合意分割と３号分割
専業主婦だった元妻が会社員の元夫に対して、離婚後に年金分割を請求するというケースで考えてみます。
「年金分割」とはこの場合、元夫の将来の年金額の基礎となる厚生年金保険料（報酬比例部分）の納付実績を元妻と分け合うことで、最大で納付実績の半分が元妻のものになるというものです。
例えば↓
（例１）分割前の当事者二人の納付実績が、元夫対元妻が80対20だったものが、分割後は50対50になる。
（例２）元妻が第３号被保険者だった期間の当事者二人の納付実績が、元夫対元妻が100対0だったものが、分割後は50対50になる。
この年金分割には、合意分割と３号分割の２種類あります。
それぞれの違いを確認しましょう。
当事者（元夫と元妻）のこと
・合意分割では、このケースでは元夫を「第１号改定者」、元妻を「第２号改定者」といいます。
・３号分割では、このケースでは元夫を「特定被保険者」、元妻を「被扶養配偶者」といいます。
分割の対象となる期間
・合意分割では、結婚期間の全てが対象。この期間を「対象期間」といいます。
・３号分割では、平成21年４月１日以降で、元夫が厚生年金被保険者であり元妻が第３号被保険者だった期間が対象。（つまり共働きの期間は対象外。）
この期間を「特定期間」といいます。
分割の割合
・合意分割では、当事者二人の話し合いで分割割合を決めます。これを「按分割合」といいます。
按分割合は、この二人の対象期間の標準報酬総額の合計額に対する、第２号改定者（元妻）の対象期間標準報酬総額の割合を超え、２分の１以下（つまり元夫対元妻の割合が最大で50対50）の範囲内で決めます。
当事者二人の話し合いが難しいときは、どちらか一人の申立てにより家庭裁判所が決めます。
・３号分割では、元夫対元妻の割合が当然に50対50となります。
分割の手順
・合意分割では、実施機関が請求された按分割合をもとに各月の「改定割合」を決めます。
「改定割合」とは、対象期間の第１号改定者（元夫）の標準報酬が減額される割合のことです。
改定割合が３分の１の場合、元夫の標準報酬月額45万円のうち15万円が、元妻の標準報酬月額となります。
・3号分割では、特定期間の各月の特定被保険者（元夫）の標準報酬月額を２分の１に改定し、半分が被扶養配偶者（元妻）の標準報酬月額となります。
元妻のみなし被保険者期間
元夫の納付実績を元妻に分け与えたとこで、元妻が厚生年金未加入だった月も、厚生年金保険料の納付実績があったことになります。
このみなし被保険者期間のことです。
・合意分割では、「離婚時みなし被保険者期間」といいます。
・３号分割では、「被扶養配偶者みなし被保険者期間」といいます。
離婚分割の効果
次の３つだけです。
①みなし被保険者期間は、報酬比例の年金額の計算の基礎となる期間に含まれます。
②厚生年金に加入したことがなく、国民年金の被保険者期間で長期要件を満たす者が亡くなった場合、みなし被保険者期間があることで厚生年金が遺族に支給されます。
③振替加算は、厚生年金の被保険者期間が240月以上有する者には行われませんが、みなし被保険者期間はこの計算の基礎となる期間に含まれます。
事実上の離婚でも分割請求できる？
・合意分割では、事実上の離婚は、当事者の一方が国民年金第３号被保険者だった場合を除いて分割請求はできません。
・３号分割では、事実上の離婚（行方不明から３年以上経過しているなど）でも分割請求ができます。
ここにも注意
・３号分割では、特定被保険者（元夫）が障害厚生年金の受給権者である場合、その障害厚生年金の計算の基礎となった被保険者期間は、標準報酬月額の改定は行われません。
受給中の障害厚生年金の額への影響を避けるためですね。
・離婚分割後に障害厚生年金を受給することになったときの、障害厚生年金の計算方法にも要注意です。
障害厚生年金の計算の基礎となる被保険者の月数が300未満のときは、300として年金額を計算しますが、この計算の基礎となる期間にみなし被保険者期間は含まれません。
分割された標準報酬月額は比較的低額であることが多いため、みなし被保険者期間があることで障害厚生年金の額が不利になってしまうのを避けるためですね。
合意分割と３号分割の違いを中心に確認しました。
大変お疲れさまでした( ^^) _旦~~
最後までお読みいただき、ありがとうございました。