リーダー職でない方にも、ぜひ読んでほしい本です。
読めば明日からの仕事への向き合い方が、間違いなく変わると思います。
「マーケティングとは組織革命である」(著者:森岡 毅さん)

本のタイトルから、「マーケティング」のハウツー本か?と思われるかもしれませんが、全く違います。
大まかな内容は
「人をやる気にさせ、力を発揮させるために、組織に欠かせないものは何か。」
「経営陣でも管理職でもない一人の社員が、どうしたら組織を変えることができるか。」
この2点について、著者が自身の豊富な経験から生み出したメソッドが、惜しげもなく披露されているのです。
この類の本は、読んでも「書かれてあることはもっともなんだけど、具体的に何をしたらいいのかわからない」で終わってしまい、結局何も変わらないなんてこともよくありがちですが、この本は、そんな心配は無用です。
書かれてあることが非常に具体的で、「明日から実践できそう」と思えるものばかり。
この本に書かれてあることを、もっと若いときに知っていたら、私の職業人生も変わっていたかもしれない。
心からそう思った内容なので、その一部を、ここで紹介させてください。
* * * *
どうせ働くなら、例えばこんな会社で働きたい。
仕事にやりがいを感じることができ、仕事を通して学び、成長できる会社。
がんばった自分を認め、正当に評価してくれる会社。
これを、転職するとかではなく、今の会社で実現できたら最高ですが、組織は待っていても変わりません。
「だったら『あなた』が自分で、会社という組織を変えてみましょうよ!」
この本は、そんなふうに読者の背中を押してくれます。
「人の本質」を知って、組織の仕組みを変える
まずは人をやる気にさせ、その能力を最大限に発揮させるための、組織の仕組み作りから。
「組織」とは、「一人一人の能力を引き上げる装置」。
人が、一人でいるよりもはるかに大きな力を発揮できるのが、組織をつくる意義である。
一般的には「会社という組織内では自分のやりたいようにできず、能力が発揮できない」と考えられているのではないか?と思ったのですが。
でも著者によれば、人の強みを引き出すことができる強い組織に身を置くと、自身も驚くような能力を発揮することができ、大きな成果を出せるのだそうです。
では、そんなふうに「人の強みを引き出せる強い組織」とはどういう組織なのか?
まず前提として、人間の本質は、変化を拒む「自己保存」である。
これはリスクを避けるための人間の本能なのです。
もしも会社が非常に保守的で変化を好まず、上司に提案しても全く聞いてくれないとわかっていたら、そんな組織で自分が率先して考え、提案しようとするでしょうか。
ひたすら大人しく、無難にやり過ごそうとするのではないでしょうか。
これはその人間が悪いのではなく、「人間の本質」を野放しにしている組織の仕組みがだめなのです。
では、どんな仕組みが必要なのか。
「自己保存」を逆手に取るアメとムチ
人間がリスクを避けて変わろうとしないのであれば、「自己保存」の本質を逆手に取って「変わるための必然をつくる」。
例えば、定例の会議で誰も発言をしない(=会議の意味がない)のであれば、会議で発言しないことがリスクになるように、仕組みを変える。
組織にとって正しい行動をとる人間が、正当に評価される仕組みをつくるということです。
そして評価システムは「絶対評価」ではなく、「相対評価」とするのがポイント。
絶対評価では、場合によっては全員が「それなりの評価」をされてしまうこともあり得ます。
やってもやらなくても「みな同じ」では、やる気を奪ってしまいます。
評価基準は、シンプルでわかりやすいものであること。
人の能力は「行動」をとおしてしか測れないので、具体的な行動として定義できる能力だけを、評価の対象とします。
悪い例としてあげられているのが「人間力」。
人間力という広大な概念を、具体的な行動に落とすことは非常に困難です。
結果、評価者の主観によって、あらゆる解釈を赦してしまうことになります。
評価に基づく待遇の変更も必須です。
評価が給料やボーナスの額に反映される、または昇任に繋がるような仕組みをつくります。
これまでの年功序列による既得権が崩されても、やる気がある者はこれまで以上に高いパフォーマンスを発揮するでしょう。
これらの改革が組織の活性化につながるためには、評価そのものが正しく、公平なものでなくてはなりません。
絶対評価よりも相対評価の方が、評価者にとってはより多くの時間と労力が必要となり、負担感が大きいもの。
でも会社にとって、最重要資源である「人」の評価よりも重要なことはない、としています。
もちろん、お金だけをアメとムチにしてもだめで、人は「自分の働きを承認してくれる」「やりがいを感じられる」「学べる」「成長できる」など、報酬以外にも様々な価値を組織に見出すもの。
リーダーは、このようなモチベーションの源泉を理解することに情熱を傾けなければならない、としています。
下から提案を通す魔法のスキル
次に、管理職でもない一人の社員が、組織を変えるにはどうしたら良いか。
まずは「うたれ強さ」が必要。
(思わず大きくうなずいた私。)
そして、変化を起こす内容が、組織全体にとって大事であること、がポイント。
そうでなければ提案者は評価されないばかりか、どうでもよいことに文句ばかり言っている問題児だと思われてしまいます。
組織のメリットになる提案をするためには、上司やその上司が何を求めているのか、何に困っているのかを、日頃から注意を払って理解しておきます。
また、提案の内容を実現するための方法も、具体的に示せるようにしておきます。
夢を見つけて語ることはできても、どうすれば実現できるのか説得力ある道筋を示せなければ、相手はその成功をイメージできません。
著者は、ここで社内マーケティングの技法を用いることによって、相手に「実現できる」と信じさせるとしています。
さらに、提案に「やりがい」を盛りこむことができれば、チームもやる気になり、強力なサポートが得られます。
結果、提案が実現する成功確率が一気に高まります。
小さなことから実践してます
この本に書かれてあることを実践して成功させるためには、うたれ強さが必要なことはもちろんですが、それ以外にも必要なことがあるように思います。
例えばそれまでの実績、どれだ真剣に仕事と向き合ってきたか、周囲から信頼されているか。
仕事は自分の分だけをさっさと済ませて退社、めんどうな仕事からはやんわりと逃げる、そんな人間がいきなり「組織を変えたい!」と張り切ったところで・・・
それが組織にとって必要な提案だったとしても、受け入れられる可能性は低いでしょう。
まずはこの本を読んで、自分の仕事への向き合い方を見直すことから始めても良いかも。
自分の意識が変われば、仕事のしかたも変わり、周囲の評価も変わりますからね。
で、シニアの私は、もう組織で働く時間はそれほど多く残されていないし、年齢も最年長に手が届くほどなので、待つ必要はないと判断。
小さなことから少しずつ、実践しているところです。
これが評価につながるかはさておき、仕事は、真剣に向き合ったほうが面白いことは間違いありません。
森岡さんの著書はどれも内容が素晴らしく、今回ご紹介したこの本も、シニアの皆さんに自信をもってお勧めできます。もちろん、若い方にも。
組織で働く方にとって、非常に学びの多い1冊です!
※こちらの記事もぜひお読みください。
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組織のリーダーが読んでおきたい本①
最後までお読みいただき、ありがとうございました。